はじめに

授業中、ぼんやりと地図ばかり眺めていた。
 
 
中国、チベット、ネパール、インドへと続く大陸に思いを馳せ、
南米に住むインディヘナの暮らしを想像し、
動物たちが駆け抜けるアフリカの大地に心を躍らせながら、
狭い教室の中でいつも旅をしていた。
 
当然、僕の地理の成績はいつも赤点ギリギリをさまよってばかりだった。
 
 
妄想の旅を続けていると、今までまったく知らなかった外国にまつわる単語を知るようになり、
その音にドキドキするようになった。
 
ダライ・ラマ、カッパドキア、マサイマラ、チャリダー、チベタン、ウユニ、ボゴタ、
ロカ岬、エルサレム、ヌビアン、アウシュビッツ。
 
知らなかった音を探すように地図を眺め、かつて旅をした人たちの言葉を集め、
いつか、いつかと繰り返しながら、その時その時で今を生きていた。
 
 
地方の田舎町で育った僕には、その地方が世界の全てだった。
幼稚園のときは町内が小学校の時は市内が、中学高校のときは県内が僕の世界の全てで、
ゆっくりと、少しずつ自分の世界が広がっていったように感じている。
 
立山より高い山を実感として想像することは難しく、御車山祭りよりも大きな祭りを知らない僕には、
富士山より高い場所に琵琶湖の12倍の面積を持つ湖があることはもちろん、
1週間夜通し踊り続ける祭りがあることなんて、これっぽっちも考えることができなかった。
 
 
 
教科書にも地図帳にも書いていない、
自分がその場にいたことで知った感覚がたまっていくことはとてもうれしい。
それは、幼稚園から小学校にあがったときに、
この町内だけが世界の全てではなかったと知ったときの感覚と似ているように思う。
 
 
このサイトは、2010年から2011年にかけて世界一周をした際に
記した文章や写真が表示されています。
 
これらの文章や写真をぼんやりと眺めて、
少しでも晴れやかな気持ちになって一日をを過ごしてくだされば、最高です。